ビットコインが再び下落。雇用統計・原油高・円高・CPI待ち――いま何が起きているのか
※2026年9月8日時点
ビットコインをはじめ、イーサリアムなど主要な仮想通貨が再び下落しています。
「何か仮想通貨に大きな悪材料が出たの?」
と気になるところですが、今回の下落は一つのニュースだけで説明できるものではありません。
現在は、
米雇用統計の上振れ
→ FRBの利上げ懸念
→ 米金利上昇
→ 原油高によるインフレ懸念
→ 円高・円キャリートレードの巻き戻し
→ CPI発表前の警戒
と、複数の材料が重なっています。
僕自身、今回の値動きを追っていて感じるのは、「仮想通貨が壊れた」というより、マクロ経済にBTCがかなり強く反応している局面だということです。
今回は、いま市場で何が起きているのかを整理してみます。
まずきっかけは「強すぎた米雇用統計」
9月4日に発表された米国の8月雇用統計では、非農業部門雇用者数が16万2,000人増となりました。
市場予想は約5万6,000人増だったため、かなり大幅な上振れです。
失業率も**4.1%**で横ばいでした。
一見すると、
「雇用が強いなら景気がいい。株やBTCにもプラスでは?」
と思いますよね。
しかし今の市場では、少し話が違います。
景気が強ければ、FRB(米連邦準備制度理事会)は急いで金利を下げる必要がありません。
むしろ、
景気が強い
→ インフレが続く可能性
→ FRBが利上げできる
→ 米国債の利回りが上がる
→ 株や仮想通貨には逆風
という流れになります。
実際、雇用統計発表後には、9月のFOMCでFRBが利上げする確率が約60%前後まで上昇しました。
これを受け、ビットコインは8万ドルを割り込む場面がありました。
株も下がった。つまりBTCだけの問題ではない
重要なのは、仮想通貨だけが下落したわけではないということです。
9月4日の米国株は、
- ダウ:-0.51%
- S&P500:-0.38%
- NASDAQ:-0.29%
とそろって下落しました。
BTCほど大きな下落ではありませんが、
「金利上昇を嫌ってリスク資産全体が売られた」
ことが分かります。
仮想通貨は株より値動きが大きいので、同じマクロ材料でもBTCやETHのほうが強く反応することがあります。
この意味では、今回の下落を単純に「仮想通貨市場の弱さ」と見るのは少し違うと思います。
さらに原油価格が約98ドルまで上昇
もう一つ気になるのが原油価格です。
米国とイランをめぐる緊張が続くなか、Brent原油は9月8日に一時1バレル98ドル台まで上昇しました。
ホルムズ海峡周辺の供給不安が意識されています。
なぜ原油高がBTCに関係するのでしょうか。
それは、
原油高
→ ガソリン・輸送費・製造コスト上昇
→ 物価が下がりにくくなる
→ FRBが金利を高く維持
→ BTCや株には逆風
となるからです。
つまり現在は、
「雇用が強いから利上げできる」
だけではなく、
「原油が高いからインフレも簡単には下がらないのでは?」
という警戒まで出てきています。
もう一つのポイントは急速な「円高」
そして今回、かなり特徴的なのが日本円です。
ドル円は9月8日に一時、
1ドル=152.89円
まで円高が進みました。
前週から見ると円は約4.5%上昇しています。
背景には、日銀の追加利上げ期待があります。
金利の低い円を借りて海外の株・債券・仮想通貨などを買う取引を、
「円キャリートレード」
と呼びます。
ところが、
日銀利上げ期待
→ 円高
→ 円を借りていた投資家の負担増
→ ポジションを解消
→ 株や仮想通貨を売る
という流れが起きる可能性があります。
実際、Reutersは現在の円高によってキャリートレードの巻き戻しが進んでいると報じています。
海外での円借入残高は2026年3月時点で約**360兆円(約2.35兆ドル)**に達しており、もちろんすべてがキャリートレードではないものの、市場への影響力の大きさを示しています。
2024年にも円キャリートレードの巻き戻しが世界的な株安につながったことがあるため、ここは注意したいポイントです。
「ドル高だからBTC安」ではないのも今回の特徴
通常、
米金利上昇 → ドル高 → BTC安
という動きになることがあります。
しかし今回は少し違います。
9月8日時点ではドル指数(DXY)は98.84付近まで低下しています。
つまり、
ドル自体が全面的に強いわけではありません。
むしろ円が急激に強くなっています。
そのため今回のBTC下落は、
「ドル高だから」
だけでは説明できません。
金利上昇・原油高・円キャリー解消・地政学リスク・CPI前のポジション調整
などが重なった下落と考えるほうが自然です。
仮想通貨固有の悪材料も一つある
一方で、完全にマクロ要因だけというわけでもありません。
9月7日には、Bitcoinを利用したサイドチェーン「Liquid Network」で、フェデレーションウォレットから約3億2,000万ドル相当が移動する問題が発生しました。
Liquid側は「purported white-hat hackers(ホワイトハットを名乗る人物ら)」によるものと説明していますが、新規取引を一時停止しています。
ここは誤解しやすいのですが、
Bitcoinそのものがハッキングされたわけではありません。
Bitcoinのブロックチェーン自体に問題が起きたわけではなく、Liquid Network側の問題です。
とはいえ、数億ドル規模のセキュリティ問題なので、仮想通貨市場のセンチメントを悪化させる材料にはなります。
結局、一番重要なのは次のCPI
そして、ここから最大の注目材料になるのが**米CPI(消費者物価指数)**です。
CPIとは簡単にいうと、
「アメリカのモノやサービスの価格がどれくらい上がっているか」
を見る数字です。
7月のCPIは、
総合CPI:前年比+3.4%
コアCPI:前年比+2.5%
でした。
市場では8月のコアCPIについて、2.4%程度への鈍化が予想されています。
ここがかなり重要です。
「雇用が強いのに物価が下がる」はあり得る?
ここで一つ疑問が出てきます。
「雇用がこんなに強いなら、インフレも上がるんじゃないの?」
という点です。
基本的には、
雇用が強い
→ 賃金上昇
→ 消費増加
→ 物価上昇
となりやすいです。
しかし必ずしもそうとは限りません。
今回の雇用統計では雇用者数こそ強かったものの、平均時給の前年比上昇率は3.1%まで低下し、2021年6月以来の低い伸びとなりました。
つまり、
雇用は強いけれど、賃金インフレは落ち着いている
という状態です。
労働力の供給や生産性が伸びれば、
雇用が増えながらインフレが低下する
ことも十分あります。
これがFRBにとって理想的な「ソフトランディング」に近い状態です。
9月10日・11日が大きな分岐点
次の重要イベントは、
9月10日:PPI(生産者物価指数)
9月11日:CPI(消費者物価指数)
です。
どちらも米国東部時間8:30発表なので、日本時間では21:30、フィリピン時間では20:30です。
まずPPIで企業側のコストが確認され、その翌日にCPIで消費者側の物価を確認する流れになります。
CPI次第でBTCはどう動く?
ここからは僕が注目しているシナリオです。
シナリオ① CPIが予想より低い
CPI低下
→ インフレ改善
→ FRB利上げ観測後退
→ 米国債利回り低下
→ 株・BTCにプラス
となる可能性があります。
特に現在は強い雇用統計を受けて利上げをある程度織り込んでいるので、CPIが予想より低ければ、
「やっぱり9月は据え置きかもしれない」
と市場が一気に逆方向へ動く可能性があります。
FRBのウォラー理事も、インフレ鈍化が確認できれば9月の金利据え置きを支持する可能性を示しています。
BTCにとってはこちらがポジティブなシナリオです。
シナリオ② CPIが予想より高い
反対に、
雇用が強い
+ CPIも高い
+ 原油も高い
となると、かなり嫌な組み合わせです。
FRBとしては、
「景気は耐えられそうだし、インフレも高い。それなら利上げできる」
という判断がしやすくなります。
その場合、
利上げ確率上昇
→ 米金利上昇
→ 株・BTC下落
という流れがさらに続く可能性があります。
現在の相場で一番警戒したいのはこちらです。
僕は今のBTC下落をどう見ているか
現時点では、僕は今回の下落を、
「仮想通貨そのものの価値が崩れた下落」ではなく、「マクロ環境悪化による調整」
と見ています。
もちろんLiquid Networkの問題など、仮想通貨固有のマイナス材料もあります。
ただ、市場全体を見ると現在の中心は、
米雇用統計
FRB利上げ観測
原油高
米国・イラン情勢
日銀利上げ観測
急激な円高
円キャリートレードの巻き戻し
CPI発表前の警戒
です。
だからこそ、BTCのチャートだけを見るより、
米10年債利回り・原油・ドル円・NASDAQ・CPI
まで一緒に見るほうが、今の相場は理解しやすいと思います。
まとめ:BTCの次の方向を決めるのは「インフレ」
今回の流れをシンプルにまとめると、
強い雇用統計
↓
FRB利上げ観測が上昇
↓
金利上昇
↓
BTC・株に売り圧力
ここへさらに、
原油高+円高+キャリートレード解消
が加わっています。
ただし、まだ方向が完全に決まったわけではありません。
次の大きな分岐点は、
9月10日のPPIと、9月11日のCPI。
僕は特に、コアCPIが予想されている2.4%前後まで下がるのか、それとも再び上振れるのかを注目しています。
雇用が強くてもインフレが低下していれば、FRBが無理に利上げする必要性は下がります。
逆に原油高などの影響でインフレが再加速すれば、BTCにはもう一段厳しい展開になる可能性があります。
今は短期的な値動きだけで慌てるというより、
「なぜ下がっているのか」を確認しながら、次の経済指標を待つ局面
ではないでしょうか。
僕自身も、PPI・CPIの結果を確認したうえで、次の投資判断につなげていきたいと思います。
※本記事は筆者個人の見解を含む情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・暗号資産への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
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