前回の記事では、2026年9月にビットコインがFRBの利上げ後も上昇し、75,000ドル台から一時87,000ドル台まで駆け上がった流れを紹介しました。
その後、僕が特に注目していたのが、9月25日に予定されていた約156億ドル、日本円で約2.5兆円規模のBTCオプション満期です。
これだけ大きな金額なら、
「16時になったらBTCが大きく動くのでは?」
と思っていました。
ところが実際に満期を通過してみると、意外なほど静か。
そして、その後BTCはじわじわ上昇したものの、9月28〜29日に再び下落しました。
今回は、
「大型オプション満期は結局何だったのか?」
というところから、その後のETF資金流入、原油高、米金利、そして次の重要イベントとなるPCEまで、実際に相場を追いながら整理してみます。
約2.5兆円のBTCオプションが満期。それでも相場は静かだった
9月25日、暗号資産デリバティブ大手Deribitでは、約182,000BTC分、金額にして156億ドル前後のBTCオプションが満期を迎えました。
内訳はコール約106,200BTC、プット約75,900BTC。
かなり大きなイベントです。
僕も当初、
「これだけ大きなオプションが消えるなら、相場がかなり動くのでは?」
と思っていました。
しかし実際には、BTCは84,000ドル前後で推移。
満期を迎えた直後に、数千ドル単位で急騰・急落するような動きはありませんでした。
ここで改めて理解したのが、
「156億ドルのオプション満期=156億ドル分のBTCが一斉に売買される」わけではない
ということです。
オプションの156億ドルという数字は、あくまで契約の名目金額。
すべてが現物BTCの売買につながるわけではありません。
価値がなくなってそのまま期限切れになる契約もありますし、マーケットメーカーも満期の瞬間に突然ポジションを調整するわけではなく、それ以前からヘッジを進めています。
つまり、
「大型オプション満期=必ず大暴落・大暴騰」
と考えるのは少し単純すぎるということですね。
むしろ満期前はBTCの値動きが抑えられていた可能性
今回もう一つ興味深かったのが、オプション市場のヘッジです。
オプションを販売しているマーケットメーカーは、自分たちの損失を抑えるためにBTCなどを売買します。
状況によっては、
BTCが上がったら売る
BTCが下がったら買う
というヘッジが働きます。
この状態では、価格変動が拡大するのではなく、逆に一定の価格帯へ戻そうとする力になることがあります。
9月25日のBTCも84,000〜85,000ドル付近で比較的落ち着いており、米国債利回りの上昇が一服したことも価格安定につながっていました。
そのため今回の大型満期については、
「満期が相場を大きく動かした」
というより、
「満期まで価格を抑えていたデリバティブ要因の一部が消えた」
と考える方が自然だと思います。
満期後、BTCはじわじわ上昇
実際、満期後のBTCは急騰こそしなかったものの、少しずつ価格を戻しました。
ここで気になったのが、
「これはオプション満期の影響なのか?」
という点です。
結論としては、多少は関係していた可能性がありますが、それだけではありません。
むしろ満期後のBTCを支えていた最大の材料は、現物ETFへのかなり強い資金流入でした。
9月21〜25日の1週間で、米国の現物BTC ETFには約24億ドルが純流入。
2026年最大の週間流入となり、2025年10月以来でも最大規模でした。
特に9月21日には約9.99億ドルが1日で流入。
その後も、
9月22日:約7.15億ドル
9月23日:約3.47億ドル
9月24日:約1.91億ドル
9月25日:約1.35億ドル
と、5営業日連続で資金流入が続きました。
つまり、
オプション満期通過
+
ETFから現物買いが続く
という状況です。
BTCが急落せず83,000〜85,000ドル付近を維持していたのは、こうした現物需要が下値を支えていた可能性があります。
「満期を無事通過したから、このまま上昇?」と思った矢先に下落
ところが、9月28〜29日にBTCは再び下落。
一時82,600ドル付近まで下がりました。
ETH、XRP、SOLなどのアルトコインも同時に下落しています。
最初は、
「仮想通貨に何か大きな悪材料が出たのか?」
と思いました。
しかし今回は、暗号資産内部の問題というより、マクロ環境の悪化が大きな原因でした。
米・イラン情勢悪化で原油が再び急騰
今回かなり大きかったのが原油です。
米国とイランの交渉が停滞し、中東情勢への懸念が再び強まったことで、ブレント原油は一時108ドル近くまで急騰しました。
原油が上がるとBTCに直接悪影響があるわけではありません。
問題はその先です。
原油価格上昇
↓
ガソリンや輸送コスト上昇
↓
インフレ懸念上昇
↓
FRBが追加利上げしやすくなる
↓
米国債利回り上昇
↓
株・BTCなどリスク資産が売られる
という流れです。
実際、米10年債利回りは2007年以来の高水準まで上昇。
2年債利回りも4.9%台へ上がり、金融市場では10月の追加利上げを織り込む動きが強まりました。
米株も同時に下落しているので、
「BTCだけに問題が起きた」わけではありません。
Nasdaq、S&P500、BTCなど、リスク資産全体が売られた形です。
FRB関係者からもインフレ警戒発言
さらにFRB関係者からもタカ派的な発言が続いています。
FRBのクック理事は9月28日、原油高や強い需要などから、今後もインフレ圧力が続く可能性を指摘しました。
Fedはすでに9月に0.25%の利上げを実施していますが、年内の追加利上げも依然として視野に入っています。
クリーブランド連銀のハマック総裁も、インフレが長期間2%目標を上回っていることについて警戒感を示しています。
ここまでのBTC上昇には、
「そろそろ金融引き締めのピークでは?」
という期待も入っていました。
そこへ、
原油高+Fedのタカ派姿勢
が重なったため、いったん利益確定する投資家が増えたと考えると分かりやすいです。
500億円超規模の清算も下落を加速
さらに、BTCは75,000ドル台から87,000ドル台まで短期間で大きく上昇していました。
上昇が続くと、
「まだ上がる」
と考えてレバレッジをかけたロングポジションも増えます。
そこへ価格下落が始まると、
BTC下落
→ ロングが強制清算
→ BTCがさらに売られる
→ 次のロングも清算
という連鎖が起こります。
今回も仮想通貨市場では5億ドル超規模の清算が発生したと報じられており、急落を加速させた要因の一つになりました。
つまり今回の下落は、
原油高
+ 米金利上昇
+ Fed追加利上げ懸念
+ 急騰後の利益確定
+ レバレッジ清算
が重なったものと考えられます。
それでもETFへの資金流入は無視できない
ここまで読むと、
「またBTCは下落相場へ戻るのでは?」
と思うかもしれません。
ただ、僕自身はまだそこまで悲観していません。
理由の一つが、やはりETFです。
9月25日までの1週間だけで約24億ドルが入り、米BTC ETFの2026年累計資金フローも再びプラス圏へ戻りました。
7月中旬には年初来で約58億ドルの資金流出だったことを考えると、わずか2カ月ほどでかなり大きな変化です。
さらに同じ週には、
ETH ETF:約6.9億ドル流入
XRP ETF:約7,600万ドル流入
となっており、BTCだけではなく暗号資産全体への機関投資家資金が戻っています。
だから現在の相場は、
ETFによる現物買い
と、
高金利・原油高
が綱引きしているような状態だと感じています。
次の大イベントは9月30日のPCE
そして今、僕が一番注目しているのが9月30日の米PCE物価指数です。
米商務省BEAによると、8月分のPersonal Income and Outlaysは9月30日8:30 EDTに発表予定です。
PCEはFRBが金融政策を考える際に重視しているインフレ指標です。
前回7月のPCEは前年比**+3.7%**。
食品・エネルギーを除いたコアPCEは**+3.3%**でした。
FRBの目標である2%からはまだかなり離れています。
さらにクリーブランド連銀のInflation Nowcastingでは、8月について、
PCE:前年比約3.8%
コアPCE:前年比約3.4%
と推計されています。
つまり現時点では、
インフレが大きく鈍化する
というより、
高止まり、あるいは少し上昇
する可能性が意識されています。
PCEが高ければBTCは下がる?
ここも今回の相場を見て学んだポイントです。
必ずしも、
PCE上昇=BTC下落
ではありません。
重要なのは、市場予想との差です。
例えば市場がすでに、
「今回はPCEが3.8%くらいまで上がりそう」
と予想している状態で、実際に3.8%だったとします。
その場合、
「想定通りだった」
として、悪材料出尽くしでBTCが反発することもあります。
逆に、市場予想を大きく上回る数字が出れば、
追加利上げ観測上昇
→ 米金利上昇
→ BTC下落
となる可能性があります。
僕なら今回は、特にコアPCEを見たいと思っています。
食品とエネルギーを除いても物価が上がっているなら、インフレが一時的な原油高だけではない可能性が出てくるからです。
PCE発表後は「BTCより米金利」を先に見る
PCEが発表されたらBTC価格だけを見るのではなく、
① PCE実績と予想との差
② 米10年債利回り
③ ドル
④ BTC
の順番で見ると、マーケットが数字をどう解釈したか分かりやすいと思います。
例えば、
PCEが低い
→ 米金利低下
→ ドル安
→ BTC上昇
なら、かなり分かりやすいリスクオンです。
逆に、
PCEが高い
→ 米金利上昇
→ ドル高
→ BTC下落
なら、追加利上げを市場が警戒している可能性があります。
数字そのものより、その数字を受けて金利がどう動いたかを見ることが大切です。
今後のBTCで見ている価格帯
現在は80,000ドル台前半〜半ばが主戦場になっています。
僕自身は、ざっくり以下のように見ています。
85,000ドル回復
→ 少し状況改善
87,000ドル台突破
→ 上昇再開の可能性が高まる
82,000ドル割れ
→ 少し警戒
78,000〜80,000ドル割れ
→ 今回の上昇トレンド自体を再評価
今回87,000ドルから82,000ドル台まで落ちても、まだ75,000ドル台まで全戻ししているわけではありません。
ETFへの現物買いも残っています。
そのため9月29日時点では、
「上昇トレンド終了」ではなく、マクロ環境悪化による調整
という見方をしています。
今回あらためて感じたこと
今回の一連の相場で特に印象的だったのは、
ニュースの見出しだけで値動きを予想するのは難しい
ということです。
「2.5兆円のBTCオプション満期」
と聞けば、大きく動きそうに思えます。
しかし実際はほぼ無風でした。
その後じわじわ上昇したと思ったら、今度は原油と米金利で下落。
そして次はPCEです。
市場は、
一つのイベントが終わったら、すぐ次の材料を織り込み始める
んですね。
だから最近は、
「このニュースは良いか、悪いか」
だけではなく、
「市場はそのニュースをすでにどこまで予想しているのか?」
を見ることが大事だと感じています。
まとめ|今のBTCは「ETF買い vs インフレ・高金利」
前回の記事以降をまとめると、
大型オプション満期
→ 意外と無風
→ ETF資金流入を背景にじわじわ上昇
→ 原油高・米金利上昇
→ BTC再び82〜83K台へ調整
→ 次はPCE
という流れです。
今のBTCには、
約24億ドルのETF資金流入
というかなり強い追い風があります。
その一方で、
原油100ドル超
米金利5%超
FRB追加利上げ観測
という強い逆風もあります。
だから僕は現在のBTCを、
「ETF買い vs インフレ・高金利」
の綱引きだと見ています。
そして、そのバランスを次に動かす可能性があるのが9月30日のPCEです。
PCEが予想より低ければ、再び85,000〜87,000ドル方向へ向かうきっかけになる可能性があります。
反対に強い数字が出れば、82,000ドルや80,000ドル付近を再び試す展開も考えられます。
どちらへ動くとしても、今回も価格だけを見るのではなく、
PCE → 米金利 → ドル → BTC
という流れで相場を追ってみようと思います。
※本記事は2026年9月29日時点の公開情報と筆者自身の相場観察をもとにまとめたものであり、特定の暗号資産の購入・売却を推奨するものではありません。
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