Strategy(旧MicroStrategy)は何で稼ぐ会社?ビットコインを買い続ける仕組みを調べてみた
Strategy(旧MicroStrategy)という会社をご存じでしょうか。
ビットコインに投資している人なら、
「またStrategyがビットコインを買い増した」
というニュースを一度は見たことがあると思います。
僕自身、以前からこの会社について疑問がありました。
「そもそも、何の会社なんだろう?」
そして、さらに気になったのが、
「ビットコインを買って保有するだけで、どうやって会社として利益を出すの?」
ということです。
調べていくと、Strategyは単純に「ビットコインを大量保有している会社」ではありませんでした。
もともとは企業向けソフトウェア会社。
そこから、
ソフトウェア会社 → BTCを保有する会社 → BTCを中心に資本市場を活用するBitcoin Treasury Company
へと、会社そのものが大きく変化しています。
今回は、Strategyがなぜビットコインを買い始め、どうやって会社価値を高めようとしているのかを、できるだけシンプルに整理します。
Strategyはもともと普通のソフトウェア会社
Strategyは1989年に設立された米国企業です。
以前はMicroStrategy(マイクロストラテジー)という社名で、企業向けのBI(ビジネスインテリジェンス)・データ分析ソフトウェアを提供してきました。
つまり、もともとは完全にIT企業です。
ところが2020年、大きな転換点が訪れます。
当時の売上を見ると、
| 年 | 売上 |
|---|---|
| 2018年 | 約4.98億ドル |
| 2019年 | 約4.86億ドル |
| 2020年 | 約4.81億ドル |
となっていました。
倒産しそうだったわけではありません。
ただ、売上が約5億ドル前後で横ばいになっており、高成長企業とは言いにくい状態でした。
そこで経営陣が抱えた問題の一つが、
「会社に余っている現金をどう使うか?」
でした。
2020年、余った現金をビットコインへ
2020年8月11日。
MicroStrategyは突然、
21,454 BTCを2億5,000万ドルで購入
すると発表しました。
当時の平均取得価格は1BTCあたり約1万1,650ドルです。
会社はこの購入について、単なる投機ではなく、
「長期的な株主価値を最大化するための資本配分戦略」
と説明しました。
同時に、ビットコインを現金よりも長期的な値上がり余地が期待できる「価値保存資産」と位置付けています。
ここがStrategyのビットコイン戦略の原点です。
当初の考え方は非常にシンプルでした。
会社を運営するために必要な現金以上の資金を、現金のまま眠らせるのではなく、価値が上がる可能性のあるBTCへ移す。
現在のような巨大なBitcoin企業になることが、最初から決まっていたわけではありません。
実は最初からBTC一本だったわけではない
これも調べていて面白かったポイントです。
2020年7月に発表された当初の資本配分戦略では、
2億5,000万ドルを株主還元に使い、さらに最大2億5,000万ドルを株式・債券・金・Bitcoinなどの代替資産へ投資する
という構想でした。
つまり、
「Bitcoinに全財産を突っ込もう」
という話ではありませんでした。
しかし最終的にBitcoinを選択。
その後さらに購入を進め、2020年9月には保有量が38,250 BTCまで増えました。
そしてBitcoin価格の上昇とともに、MicroStrategy株そのものにも投資家の注目が集まり始めます。
ここから戦略が変わっていきます。
「利益でBTCを買う」から「資本市場からお金を集めてBTCを買う」へ
最初は、
ソフトウェア事業で稼ぐ
↓
余った現金でBTCを買う
という普通の財務戦略でした。
ところがStrategyは次第に、
株式を発行する
↓
投資家から資金を集める
↓
その資金でBTCを購入する
という方法を使い始めます。
さらに転換社債や、現在ではSTRC・STRK・STRF・STRDなどの優先株も活用しています。
つまり現在のStrategyは、
本業で稼いだお金だけでBTCを買っている会社ではありません。
むしろ大量のBitcoin購入資金の中心は、資本市場から調達したお金です。
2026年上半期だけでも、Strategyは約136.7億ドル分のBitcoinを購入しており、その資金は主にMSTR普通株やSTRC・STRKなどの発行によって調達されています。
でも株を発行したら、株主は希薄化しないの?
ここがStrategyの仕組みで最も重要なところです。
通常、会社が新株を発行すると株数が増えるので、既存株主にとっては希薄化になります。
ところがStrategyは、
「株数が増える以上のペースでBitcoinを増やせばいい」
と考えています。
非常に単純な例で考えてみます。
会社が、
100億円分のBTCを保有
発行株式数10株
だったとします。
1株あたりでは、
10億円分のBTC
を持っている計算です。
ところがStrategy株が市場で高く評価され、1株20億円で取引されているとします。
ここで1株新しく発行すると、
20億円を調達
できます。
その20億円すべてでBitcoinを買った場合、
BTC保有額:100億円 → 120億円
株数:10株 → 11株
となります。
すると、
120億円 ÷ 11株=約10.9億円
です。
新株を発行して株数が増えたにもかかわらず、
1株あたりBitcoinは10億円 → 約10.9億円
へ増えました。
これがStrategyが重視しているBitcoin Per Shareという考え方です。
Strategyは「BTCを売って利益を出す会社」ではない
ここも僕が一番疑問に感じていたところです。
Bitcoinを買って、
「値上がりしたら売って利益確定」
を繰り返す会社なのかと思っていました。
しかし実際は違います。
Strategyの基本戦略は、
BTCそのものを長期的な資本として保有すること
です。
Strategy自身も現在、
世界初のBitcoin Treasury Company
と会社を位置付けています。
つまり、
Bitcoinを売買して利益を稼ぐトレーディング会社ではない
ということです。
では、Strategyはどうやって利益を出すのか?
ここでは「利益」を3種類に分けるとわかりやすくなります。
① ソフトウェア事業から実際の売上を得る
現在もソフトウェア事業は続いています。
2025年のソフトウェア売上は約4.77億ドル。
2024年の約4.63億ドルから約3%増えています。
特にクラウド型のサブスクリプション収入は、
2024年:約1.07億ドル
2025年:約1.76億ドル
まで増加しました。
つまり、現在でも
顧客 → ソフトウェア利用料 → Strategy
という実際のキャッシュフローがあります。
ただし、会社全体のBitcoin資産と比べると、この事業の規模はかなり小さくなっています。
② BTC価格上昇による会計上の利益
2025年以降、Bitcoinは時価評価されます。
たとえば100億円で買ったBTCが150億円になれば、売却していなくても、
50億円の評価益
が損益に反映されます。
逆にBitcoin価格が下落すると、巨額の評価損が発生します。
実際、2026年上半期にはBitcoin価格の下落によって、Strategyは約227.7億ドルの未実現損失を計上しています。
つまり、
会計上の利益・損失はBitcoin価格によって大きく動く
ということです。
ただし、評価益は現金収入ではありません。
③ BTCを資産基盤にして会社価値を大きくする
Strategyが本当に狙っているのは、ここだと思います。
Bitcoinを大量に保有する。
↓
会社の資産価値が増える。
↓
MSTR株や優先株への需要が生まれる。
↓
資本市場からさらに資金を調達する。
↓
その資金でBitcoinを追加購入する。
↓
1株あたりBitcoinを増やす。
という循環です。
つまり、
「BTCを売って利益を確定する」よりも、「BTCを増やし続けることで株主価値を高める」
ことが中心です。
「安く資金を集めて、より大きく成長する資産を買う」という考え方
Strategyの戦略をさらに単純化すると、
資金調達コストよりもBitcoinの長期的な成長率が高い
ことに賭けています。
たとえば年10%程度のコストで100億円を調達し、その100億円でBitcoinを購入。
Bitcoinが長期的に年20%上昇すると、
Bitcoinの資産増加:20億円
資金調達コスト:10億円
となり、
差額10億円分の経済価値
が生まれるイメージです。
もちろんBitcoinが下落すれば逆になります。
だからこそ、このモデルはBitcoin価格が長期的に上昇することを前提とした戦略でもあります。
では、Bitcoinは一切売らないのか?
実はそうでもありません。
2026年6月、Strategyは正式にBTC Monetization Program(BTC収益化プログラム)を導入しました。
現在は必要に応じてBitcoinを売却できます。
主な目的は、
優先株の配当、借入金の利息、ドル準備金の補充、自社株・優先株の買い戻し
などです。
実際、2026年7月までに約2,225 BTCを売却し、約1.35億ドルを現金化しています。
その資金は優先株の配当やドル準備金の補充などに利用されています。
つまり、
「安く買って高く売るためにBTCを売る」のではなく、会社を運営するために必要な現金だけを一部取り出す
という考え方に近いです。
現在は「Bitcoin事業」と「Software事業」の二本立て
そして2026年、非常に象徴的な変化がありました。
Strategyは正式に会社を、
Software
と
Bitcoin
の2つの事業セグメントに分けて報告するようになりました。
Bitcoin事業には、
Bitcoinの取得・保有
普通株・優先株による資金調達
資本管理
ドル準備金の管理
などが含まれます。
これはかなり大きな変化です。
以前は、
「ソフトウェア会社がBitcoinを保有している」
という状態でした。
現在はむしろ、
「Bitcoin Treasury Companyがソフトウェア事業も運営している」
と考えたほうが実態に近くなっています。
ソフトウェア事業は成長していないのか?
完全に衰退しているわけではありません。
2023〜2025年の売上を見ると、
| 年 | 売上 |
|---|---|
| 2023年 | 約4.96億ドル |
| 2024年 | 約4.63億ドル |
| 2025年 | 約4.77億ドル |
なので、全体としては大きく成長していません。
ただし、クラウド型サービスについては成長しています。
2025年のサブスクリプション売上は前年比で約6,890万ドル増加しました。
そのため、
成熟したソフトウェア事業を維持しながら、Bitcoinを新しい成長エンジンにした
と考えるのがわかりやすいと思います。
現在、StrategyはどれくらいBTCを持っている?
Strategy公式のBitcoin Ledgerによると、2026年8月31日時点で、
845,050 BTC
を保有しています。
取得総額は約637億ドル。
平均取得価格は、
1BTCあたり約75,412ドル
です。
ここまで来ると、ソフトウェア事業よりもBitcoin価格の変動が会社価値に与える影響のほうが圧倒的に大きくなっています。
Strategyの弱点も理解しておきたい
この仕組みを見ると、
「BTCを増やせば増やすほど最強なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし当然リスクもあります。
最大の問題は、
Bitcoin自体はキャッシュフローを生まない
ことです。
株なら配当、不動産なら家賃があります。
しかしBitcoinを85万BTC持っていても、Bitcoinそのものから毎月ドルが入ってくるわけではありません。
一方Strategyには、
優先株の配当
借入金の利息
会社の運営費
などがあります。
そのため現在は、
株式・優先株による資金調達
ソフトウェア事業からのキャッシュ
ドル準備金
必要に応じたBTC売却
によって資金繰りを行っています。
Strategy自身も、資本市場からの資金調達に大きく依存しており、必要であればBitcoinを売却する可能性があるとリスク要因として説明しています。
つまり、
BTC価格下落+MSTR株の評価低下+資金調達環境悪化
が長期間同時に続けば、この仕組みはかなり厳しくなる可能性があります。
MSTRを買うことはBTCを買うこととは違う
ここも大事です。
Bitcoinを直接購入する場合は、基本的にBitcoin価格そのものへの投資です。
一方MSTR株を購入すると、
Bitcoin価格
だけでなく、
Strategyの資金調達能力、株式のプレミアム、希薄化、優先株・債務の負担、経営陣の資本配分能力
にも投資することになります。
つまりMSTRは、
「Bitcoin+Strategyの金融戦略」
への投資です。
BTCより大きく上昇する可能性がある一方、Strategy独自のリスクも追加されます。
まとめ|StrategyはBTCを「会社の資本」に変えようとしている
僕自身、Strategyについて、
「ビットコインを大量に買っているのはわかった。でも、それでどうやって会社として儲けるんだろう?」
という疑問をずっと持っていました。
調べてみると、その答えは意外とシンプルでした。
Strategyは、
Bitcoinを売買して利益を出す会社ではありません。
Bitcoinを長期的な「資本」として大量に保有し、
そのBitcoinを背景に資本市場からお金を集め、
さらにBitcoinを増やし、
1株あたりのBitcoin価値を高めることで会社価値を成長させようとしている会社
です。
最初は、
ソフトウェア事業で稼いだ余剰現金をBitcoinへ
という小さな財務戦略でした。
それが成功したことで、
余剰現金 → BTC
から、
株式・債券・優先株で資金調達 → BTC
へ進化。
そして現在では、
Bitcoinそのものが会社の中心的な事業
になりました。
2026年にはBitcoin事業が正式に独立した事業セグメントになったことを考えても、この変化は象徴的です。
Strategyを見るときは、
「Bitcoinをたくさん持っているソフトウェア会社」
ではなく、
「Bitcoinを資産基盤として資本市場を活用し、Bitcoin Per Shareを増やそうとしているBitcoin Treasury Company」
と考えると、一気にわかりやすくなります。
個人的にも、ここまで理解してようやく、
「なぜStrategyはあれほどBTCを買い続けるのか?」
という長年の疑問がスッキリしました。
ただし、このモデルが長期的に成功するかどうかは、Bitcoin価格だけでなく、Strategyが今後も有利な条件で資金調達を続けられるかにも大きく左右されます。
だからこそMSTRを見る場合は、
Bitcoin価格だけではなく「資金調達」「Bitcoin Per Share」「株式希薄化」「優先株・債務」までセットで見ること
が重要だと感じています。
※本記事は特定の金融商品や暗号資産への投資を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身のリスク許容度や資産状況を踏まえて行ってください。
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